1月10日(金)〜12日(日)の3日間、アメリカンクラフトビア・エクスペリエンス2023が、東京都港区のウォーターズ竹芝の芝生広場で開催されました。米国の小規模・独立系クラフトビールメーカーの業界団体、アメリカンクラフトビール協会(Brewers Association)が主催するもので、今回で7回目でした。3年ぶりのリアルイベント実施となった昨年から、会場が屋内から屋外に。ビール愛好家以外でも立ち寄りやすい雰囲気になり、フードトラックが並ぶ広場には、ビールとライブミュージックを楽しむ人々が押し寄せました。
西はハワイ、東はニューヨークまで、33のブルワリーから、75アイテムが出品。現地からたくさんのブルワリーメンバーが結集し、来場者たちと交流しました。
協会ディレクターのスティーブ・パー氏によると、昨年度は75社のアメリカのクラフトビールが日本に輸入されてあり、ブルワリー数では世界No.1のマーケットなのだとか。「食の国、日本では品質の高さを求める消費者が多いですね。アメリカンなビールというより、良いビールだということを知って頂けたら嬉しいです。日本のクラフトビールファンの間ではアメリカンIPAが一番人気と聞きますが、イベントでは、サワー、フルーツ、スタウト、バレルエイジドなども含め、幅広いスタイルのアイテムを揃えました。私たちのクラフトビールはイノベーション、アメリカンスピリットに満ちています。イギリスやドイツなどのビール伝統国では、新たなビールづくりにおいてアメリカンスタイルを採用しています。そしてアメリカでは、日本のように米を副原料にしたビールが流行しています」。
来日したブルワリーの方々から、お話を聞くことができました。
(左)エコーズ・ブリューイング・カンパニーのマーク・フット氏。6年前からこのイベントに参加している常連です。ブルワリーはワシントン州のシアトル近く。「ザ・ウェーブ・ダブルIPA」はIBU 80、ABV 8.5%にも拘わらず、なめらかな飲み口。さらに一段濃いIBU 100、ABV 11.1%「ツナミ・トリプルIPA」は津波が押し寄せてくるかのようなアロマとフレーバー。
(中)シエラネバダ・ブリューイング・カンパニーのスティーブ・グロスマン氏。手にしているのは、世界最初期のアメリカンIPA、「セレブレーション・フレッシュホップIPA」。収穫後1週間以内のホップを使用、このイベントのために空輸されました。寒いホリデーシーズンに飲んで欲しいという意味で、パッケージには雪景色の絵が。
(右) マウイ・ブルーイングのギャレット・マレロ氏。ハワイのマウイ島で本格的なビールづくりを実現したレジェンドです。「ココナッツ・ヒワ・ポーター」は、発酵後にトーストしたココナッツを投入した常夏の島を思わせる味わい。牛や鹿などの肉料理に、あるいはチョコレートやアイスクリームなどのスイーツと合わせても。
(左)イースト・ブラザーズ・ビール・カンパニーのロバート・ライトナー氏。カリフォルニア州サンフランシスコ・ベイエリアのリッチモンドのブルワリー。クラシックなビアスタイルを追求しています。「ボ・ピルス」はスムーズな口当たりのボヘミアン・ピルスナー。シャープな味わいのジャーマン・ピルスナーに比べて柔らかい味わいに仕上げているそうです。
(中左) ヘビー・リフ・ブリューイング・カンパニーのマイク・ザーラ氏。アンバイザー・ブッシュ社のお膝元、ミズーリ州セントルイスにあり、お蔭で良質な水に恵まれているといいます。社名がギターのリフを語源にしているだけに、アイテム名も「ラブ・ガン」「ブラック・カラント・レイラ」などロックの楽曲に因むのだそうです。ビールのアプリUntappdで世界一になった「バニラコーヒー・アンダー・ブラウン」は、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドからの命名。日本未輸入。
(中右) パラドックス・ブルワリーのポール・ムロッカ氏。前職の陸軍パイロットとして駐屯していたドイツでビールの沼にハマりました。ブルワリーはニューヨーク州北部にあり、アディロンダック公園の地下600フィートの地下水を使用。ろ過や処理を必要としないピュアで軟らかい水はジャーマン・ラガースタイルにぴったりだそうです。「パラドックス・ピルスナー」チェコのザーツと、ドイツのテトナングを使用したマッシュアップ。日本未輸入。
(右)903(ナイン・オー・スリー)ブリュワーズのジェレミー・ロバーツ氏。テキサス州シャーマンで10年前に立ち上げたブルワリーで、今回が日本初上陸です。彼が注いでいるのはビールではなく、ハード・セルツァー。新鮮なオレンジを使用、同じシリーズで、グレープやストロベリーもあり、ホップは不使用です。清涼飲料水より、色もフレーバーも濃く、果実感たっぷりのチャーミングな甘さ。ユニークでイノベイティブな一品です。
アメリカで1970年代には約100箇所だった醸造所数は、2022年には9,500以上になったといいます。全米のビール売上の25%をクラフトが占め、自宅の半径10マイル以内に1軒はクラフトビールのブルワリーがあるほど、市場は成長したそうです。
アメリカンクラフトビア・エクスペリエンス2023は、先月末締切りのSNSキャンペーン「ビール好きコンテスト」を以て一段落というところのようですが、Facebookでの投稿はまだ続いています。今年2月から連載の「A Journey Across the U.S. to Craft Breweries」。イベント会場での出店のなかったブルワリーもカバーしているので、訪問してみて下さい。
https://www.facebook.com/ACBEjapan/