バレンタインデーから半月過ぎた2月28日、チョコレート三昧のひとときをビールとともに過ごす。Biersommelier-Stammtischの開催場所としてお馴染みのCraft Beer 2むぎで、根岸絹恵協会理事が数年間かけてコレクトしたチョコレートビールをアフタヌーンティー風に楽しむ「Afternoon Beer Party for Chocolate Beer」と銘打つ会がありました。ビールのラインナップは全41種。小さな試飲用プラカップでの提供とはいえ、全部飲んだら相当な量です。アルコールキャパシティの個人差を考慮し、9,000円の全種類飲み比べと6,000円の20種飲み比べの2コースが設けられました。

銘々皿に取り分けられたフード
アフタヌーンティーのスリーティアスタンドは、トップの画像のとおり下段にセイポリー(サンドイッチ}、中段にスコーン、上段にスイーツ(クッキー&ケーキ)が盛られており、下の段から食べ進めていくのが英国式流儀です。が、ここで決まっているのはビールのサービス順序だけ。銘々皿に取り分けられたフードを各自が自由に組み合わせて食べます。真ん中がティーサンドイッチ(コンビーフ、キュウリ)、その上から時計回りに、オレンジ、ナッツとドライフルーツ、RITUELのチョコレートパン(クリームチーズを添えて)。サンドイッチの左側は上から時計回りに、チョコレートパウンドケーキ、OGGIのオランジェット、チョコレートサンドクッキー、ダンデライオンのマヤ・マウンテン ベリーズ 70% チョコレートバーとピーカンナッツチョコレートです。

COEDOチョコレート・デュンケルとDandelion Chocolate
最初のビールは、サンフランシスコのBean to Barチョコレートブランド「ダンデライオン・チョコレート」のカカオハスクを使用した「COEDOチョコレート・デュンケル」の2018年、2023年、2025年、2026年の垂直比較です。食べる順序は無視して、ここはダンデライオンのチョコレートと合わせてみたくなります。後に控えるスタウトが圧倒的に多いビール群と比較して、ドゥンケルというビアスタイルは軽やか。甘く香ばしいアロマとラガーのすっきり感がマヤ・マウンテンのチョコレートバーの爽やかな酸味とマッチし、お互いの旨みを引き立て合います。ピーカンナッツにまとわせたチョコレートもカカオ70%ですが、ナッティな香ばしさと脂質の豊かさがあいまって、より若い方のヴィンテージに合いました。

サンクトガーレンのスタウト。左からインペリアル、オレンジ、ティラミス、ラズベリー、塩キャラメル、スイートバニラ、黒糖スイート
2006年からバレンタインデーの時期に登場するサンクトガーレンのチョコレートビールシリーズ。トップ画像に5本並んでいるインペリアルチョコレートスタウトは通常の黒ビールの約3倍の材料を用いたABV9%の濃厚なビール。生産者が2年間のボトル熟成が可能とするところ、2022年~2026年を垂直比較するチャレンジングなテイスティングです。その他に、橙を使用したオレンジチョコレートスタウト、パプアニューギニア産バニラを使用したスイートバニラチョコレートスタウト、そしてその年限定のチョコレートビールが揃います。今年はラズベリーチョコレートスタウト、昨年がティラミスチョコレートスタウト、一昨年が塩キャラメルチョコレートスタウト、その前年のピスタチオチョコレートスタウトまで遡っての揃い踏みです。黒糖スイートスタウトもチョコレートモルト使用です。

ココアスコーン。左上からクロテッドクリーム、ベーコンジャム、イチゴジャム
スコーンは店のキッチンで焼いた作りたてで、ココアフレーバーですが甘くはありません。お供にはクロテッドクリームとイチゴジャムというトラディショナルなアフタヌーンティーの定番がある一方で、アメリカのフードトラック発祥のベーコンジャムもあり、新旧入り混じりの顔ぶれ。ビールとスイーツの組み合わせは楽しいですが、こうしてたくさん飲む時にお菓子系ばかりでは飽きてしまいます。日本人は昔から肉そぼろなど甘い味付けの肉料理には慣れているので、こうしたスイートとセイボリーの合間にあるような味のコンディメントは嬉しい存在です。

左からベアレンのチョコレートスタウト4種、いわて蔵ショコラスタウト、常陸野ネストビール カカオオランジェ、遠野麦酒ストロベリースタウト、黄桜ビアショコラ、高津川リバービアの三都いちご
写真左から、ベアレン4種。ヴィンテージチョコレートスタウトはABV9.5%の芳醇かつ重厚なインペリアルスタウトで、賞味期限は3年間。ABV6.5%のチョコレートスタウトは2005年に生まれた日本初の英国伝統製法によるチョコレートスタウトです。ミルクチョコレートスタウトは、乳糖によるほのかな甘みが魅力。缶入りのドライチョコレートスタウトはABV4.5%のスッキリ軽やかな味わいです。カラフルなラベルのいわて蔵ショコラスタウトはカカオミートの油脂によるリッチなビターチョコのフレーバー。常陸野ネストビールのカカオランジェはブロンズ色のエールで、カカオニブからのベリー感と福来みかんのマーマレードの風味が調和します。TONO BEER STRAWBERRY STOUTは遠野産ホップIBUKIの爽やかさに紅ほっべの甘い香り。黄桜ビアショコラはココアパウダーを入れビターチョコ風味に仕上げた琥珀色のオールモルトビール。高津川リバービアの三都いちごのスイートポーターは、地元農園の完熟いちごを使用した甘やかなビールです。

全種類飲み比べコースにのみ提供されたビール
ここからの画像は全種類飲み比べコースを選択した参加者のみに提供されたビールで、筆者は飲んでいないため、アイテム名のみの紹介にて。左から、KONISHI ショコラプレミアム、Tall Boys Brewingカカオスイートスタウト、伊勢角屋麦酒CHOCOLATE BROWNIE STOUT、あくらビールチョコレートヘイジーIPA、備後福山ブルーイングカレッジのカカオハスクシュバルツ、ビアへるんショコラNo.7、Be Easyチョコレートクッキーエール、ベアレン コーヒースタウト、横濱元町カカオビール、サッポロ MILD BLACK with小枝、湯田中ブルワリーoN CHOCOスタウト。全制覇の参加者にコメントを貰おうと試みましたが、途中から何を飲んでいるのか分からなくなったという人多数。そう言いながらも自分はどれが好き、と語り合う顔は笑顔で満足げな様子が伝わってきました。ビアソムリエの講義のような試験対策トレーニングではないので、楽しめばよいのです。

サクサクのチョコレートサンドクッキーはホームメードならではの贅沢なおいしさ
20種コースでも充分に楽しめた“勝手にペアリング”で感じたのは、ビールの副原料と同方向の味筋の食材と合わせると、その特徴がよりポジティブに引き上げられること。橙を皮ごと煮込んで発酵させたサンクトガーレン(以下SG)オレンジチョコレートスタウトは、オレンジを齧ってチョコレートケーキを食べた後だとコアントローのようなフレーバーが出て来るし、カカオニブと福来みかんを使用した常陸野カカオランジェはオランジェットを食べることでマーマレードの甘みと苦味が心地よく口中に広がります。カカオとコーヒーを使用したABV8.0%のSGティラミスチョコレートスタウトは、チョコレートサンドクッキーがエスプレッソの粉のようなほろ苦さを引き立て、甘みをちょうど良い具合に整えます。賞味期限を超えてのビールのボトル熟成については、好みにより賛否両論ですが、チャレンジしてみると面白い発見があります。2年の熟成を経たSG黒糖スイートスタウトは、商品説明に記載の「泡までしっかり黒糖風味」は全く感じられないどころか黒酢系の酸味のみが感じられ、単独だと飲みにくささえ覚えました。が、2むぎ特製ミートプレートのアンガスビーフに掛けたソース(みりん、バルサミコ、赤ワイン)との相性が良く、肉の脂を切る赤ワインのようにも感じられ結果的に良いペアリングが生まれました。メーカーは推奨しないかもしれませんが、飲み手の自己責任で長期保管して冒険してみるのも一興です。

参加者で主催の根岸理事を囲んで
企画・運営した根岸理事は、店内キッチンでのフードの仕上げからビールのサービスや配膳まで、助手を付けずに一人で切り盛りしておいでだったため、レクチャーを聴きながらテイスティングするスタイルではなかったのですが、後日、このように語っています。「ダンデライオンとCOEDOのコラボのデュンケルが時間が経ってもあまり劣化していなかったのがビックリ。ビアへるんの熟成したショコラNo.7が流石の美味しさでした。また、サンクトガーレンさんのタテ飲みも大満足でした」。こういう実験的な試みは、大勢でシェアして行うのが楽しいですね。今後も、面白い企画を考えておいでとのことです。
チョコレートビールは冬季に出回る商品が多いですが、3月上旬の現時点でまだ棚に残っているものもあります。気になる方は探してみましょう。
取材・文 Doemens Biersommelier 近藤さをり







